従業員たちが確実なミスを起こすまで報告しようとしないのはナゼ?
さて、きのうは経営者の悩みのひとつ《クレーム》について書きました。致命的なクレームは、どの会社でも起こります。しかし、報告を受けた経営者は口をそろえて言います。「もっと早く報告してほしかった」と。
《1:29:300》という対比率ご存知でしょうか?これは「ハインリッヒの法則」といわれるもので、労働災害の起こる仕組みを分析したものです。1件の重大な労働事故の背景には、将来重大な事故につながるであろう「29件の軽い事故」があります。さらにその「29件の軽い事故」の裏には、将来軽い事故につながるような「300件のヒヤッとする事故」が、潜在的にひそんでいます。
この法則は《クレームという事故》にもそのまま適用できます。つまり、小さなミスの積み重なりが1件の致命的なクレームにつながるわけです。ヒヤッとするミスが発生した段階で報告が漏れなくあることが理想。けれど従業員たちは、確実なミスになるまで報告しようとはしません。なぜなら、《クレーム=叱られる》というイメージを持っているからです。
クレームやミスの重さによって、報告の重要性が決まる風習です。この風習は、日本社会の中で脈々と受け継がれてきました。それが「ミスを隠す」という習慣。「バレたら叱られる」という、子供じみた概念をもった大人が多すぎるんでしょうね。もはや幼少期の教育の段階で問題があるのかもしれません。そういった保守的な教育を受けた大人たちがビジネスの中心で活動しています。本来ならば彼らにこそ再教育が必要なのです。それが経営者の極めて大切な仕事です。
クレームを叱るのではなく、クレームを報告しなかったこと、それを叱る。言いかえれば、クレームがなかったことを評価するのではありません。早い段階でのクレーム報告を評価するべきなのです。クレームによって、商品やサービスだけでなくシステムの弱点を発見できます。それが早い段階で報告されれば、迅速な対応が可能になるんです。
クレームを言ってくる顧客は、会社や商品のコアなファンです。クレームを言わない顧客よりも、愛情が深いわけです。クレームを言った顧客の50%~70%は「欠点が改善されれば継続して利用したい」と思っています。さらに迅速な対応を受けた場合、この確率は100%近くまで上がるというデータもあるくらいです。
この法則を最大限に利用するには、クレーム《報告》を評価する教育がとても有効です。そういった風習を作ってしまえばいいわけです。改善体質ができれば、顧客の感動と口コミを呼ぶことに直結していきます。
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