三国志・西遊記・滸伝とならんで人気の怪奇小説『封神演義』とは
紫微斗数には見逃せない神話があります。それが『封神演義(ほうしんえんぎ)』で、中国では三国志や西遊記、そして水滸伝とならんで人気の怪奇小説です。ただし、「封神演義と紫微斗数とはいっさい切関係ない、まったくのでっち上げだ!」という立場の専門家もたくさんいらっしゃいます。
本流の紫微斗数の文献には、いっさい封神演義との関係性には触れていません。おそらく紫微斗数の星の性質が、封神演義の登場人物と重なる部分が多いため、のちの研究者が広めるため意図的にメイクアップしたのではないかと思います。そのあたりを知った上で、星の性質を楽しく覚えるためにぼくは利用しています。
いまをさかのぼること、はるか3500年の大昔。古代中国に「殷(いん)」という国家があり、その最後の王の物語です。王の名は紂王(ちゅうおう)。もともと紂王は立派な皇帝でしたが、それまで三十代も栄えた殷の国を破滅の道に導いてしまったため悪名高き王として知られています。
ある日のこと。行幸していた紂王は、女媧を祀るる廟(びょう)に差しかかると、急に参拝すると言い出しました。しかし女神像を見た紂王は、その美しさに感嘆し、「これほどの美女を見たことがない。このような美女を妾に加えたいものだ」と呟きながら無礼な行為を働いたのです。
これを天界でみていた女媧が、「なんと不敬な。神をも欲望の対象と見なすとは驕り高ぶるにもほどがある」と、怒り狂ったのです。そして女媧は『千年狐狸(せんねんこり)』という妖精に、「人間に化けて下界に降り、紂王を色仕掛けでたぶらかし殷を滅ぼすのだ」と命じました。
その命を受けた妖精というのが、悪女として有名な妲己(だっき)です。妲己は希代の美女でしたので、簡単に紂王の側室となり、さっそく王をそそのかして悪政を増長させたのです。無実の民を罪に陥れ、次々と死刑にし、重い税に苦しむ民衆をよそに、王を酒池肉林の宴に明け暮れさせます。ちなみに『酒池肉林』は、この時に誕生した言葉です。
そんな惨状を目のあたりにした、ある人物が立ち上がりました。それが、殷の四大諸侯のひとり姫昌(きしょう)です。しかし姫昌は、利益のためならなんでもする大臣・費仲(ひちゅう)の陰謀により7年もの幽閉生活を強いられます。
この姫昌は、のちに周の初代王となり文王(ぶんおう)と名乗った人物です。ちなみに姫昌はその幽閉中、天界より啓示を受けて「易(えき)」を体系化しました。ゆえに、『中国占術の始祖』と呼ばれています。
長くなりそうなので、続きは次回コラムにて!
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