日本の神社でよく見るシメ縄を注連縄とか七五三縄と書く理由
今日は【旧正月】です。神道家でしかも茶人一家で育ったぼくには、体の芯まで節気や旧暦が染み付いています。幼いころから、新暦の正月よりも2月の立春を『年明け』として祝っていた家系です。ぼくの両親も親類も、やはり旧暦に則った行事を重視していました。ですから、立春こそ、ぼくにとっての正月というわけです。でも、紫微斗数という占いを知ってからぼくの正月は太陰暦の新月が正月となりました。
ところで正月の飾りに欠かせないものとして注連縄(しめなわ)がありますよね。神棚や神社にもあるシメ縄、あれは一体なにかご存知でしょうか?
一般的な説としては天岩戸神話が有名です。太陽神アマテラスが、弟であるスサノヲの乱暴っぷりに天岩戸(あまのいわと)という洞窟に隠れてしまう。太陽神が洞窟に引きこもったため、世界は暗闇で覆われてしまった。困った神々はいろんな手をつくし、やっとの思いでアマテラスを洞窟から引きづり出します。そして再び洞窟に引きこもらないようシメ縄を張って天岩戸を封印した。
この神話にみられるように、しめ縄は《結界》という役割だというのが一般的な解釈です。ですから神社や神棚、玄関の正月飾りに使われるシメ縄は「邪悪なものが入ってこないよう」にする結界。
そこから先は神聖なる聖域だよ、という目印になります。でもよく考えてみると、最高太陽神であるアマテラスさえ通行できないのですからね。邪悪な存在どころか、神聖な神をも通さない結界じゃないですか。なので、ぼくは逆説的に「神が外に出てこないよう《封印》しておくための縄」だと考えているんですよ。
たとえば出雲大社のシメ縄は、特大サイズにこしらえあります。これはスサノヲなど『荒ぶる神』を封印しておくための大きさとも考えられるわけです。さらに詳しく見てみると、シメ縄の編み方にも左と右があります。一般的には《右まわり》で編みますが、出雲大社のしめ縄は逆の《左まわり》です。左か右かは、神社によって違うわけですね。
たとえば…水を排水溝に流したとき、またはトイレの水を流したとき、北半球の日本では、右回りの渦ができます。で、南半球では逆の左回りになるんですね。古来より、神道では《左旋》と《右旋》の概念が伝えられています。左が陽で男、右が陰で女とされています。
こうして考えてみるに、神社によって編み方の違うシメ縄にも「左旋」と「右旋」の概念が反映されているようです。シメ縄の縄が絡み合う姿は蛇に例えられます。
中国には始まりの神として、伏羲(ふっき)と女窩(じょか)がいます。二神とも、顔は人で体は蛇という異様な姿。伏羲は男性で《陽》を司り、女窩は女性で《陰》を意味しています。陰と陽が絡み合ってできるのは『太極』というシンボルですね。
伏羲(ふっき)は風水の元になった八卦(ハッカ)理論を作った神。女窩(じょか)は、紫微斗数の伝説でもよく語られる封神演義に登場する神様です。そんな伏羲と女窩が絡み合った《太極の象徴》がシメ縄というわけです。日本神話に由来するシメ縄も中国を起源とするわけです。
ちなみにシメ縄を漢字でかくと、《注連縄》となります。【注連】は中国語で「悪霊が入ってこないように水で清めて編んだ縄」を指します。これも単なる偶然ではないはずです。
またシメ縄は、7・5・3と一定の感覚で藁を垂らすため『七五三縄』とも書きます。子どもの成長を願う年中行事「七五三」との関係もあります。日本の神話と、中国の古代思想。
《注連縄》と《七五三縄》。
正月にまつわる道具の中でも、もっとも謎が多く、日本人の生活に自然と溶け込んでいるシメ縄。そこに見え隠れする意味深な法則が、ぼくの探求心を刺激してやまないのです。
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