「その俗、正歳四時をしらず」
大昔から、哲学者たちが唱えていた
「時間」の大切さ。
では、日本人に「時間」の概念が定着したのは、
どれくらい前のことなんでしょうか?
『魏志倭人伝』ってご存知ですよね?
というより、覚えていますか?
…と聞いたほうがいいかも。
日本史の授業で習ったはずです。
今日は、東洋における「時間」の歴史を、
ひもといてみます。
今から1700年も昔。
卑弥呼(ひみこ)が生きた
邪馬台国(やまたいこく)の時代。
当時の日本の様子を細かく記した、
中国の歴史書、それが『魏志倭人伝』です。
その歴史書の一文に、
「その俗、正歳四時をしらず」
と書いてあります。
「その俗」とは、日本人のこと。
「正歳」とは、正確な正月。
「四時」とは、四季の変わり目。
当時、文明の先進国だった中国は、
すでに天文学も発達していたし、
正確なカレンダーが整備されていたんです。
そんな文明人たちからみると、
作物の成長や収穫によって、
四季や正月を把握している日本人が、
発展途上にみえたのでしょう。
以来、日本人も中国に習って、
正確なカレンダーに従って、
年中行事を行うようになりました。
これが、日本に暦(こよみ)の
知識が輸入されたキッカケです。
では、なぜそれほどカレンダーが
重視されたのでしょうか。
「時間」が重要であることは、
かなり昔から世界中で説かれていた。
とくに文明が発達した国では、
厳密な「時間」の管理があった。
例にもれず中国も、独自の管理方法をとっていた。
それが「十干(じゅっかん)」と
「十二支(じゅうにし)」を使った表記法でした。
当時の中国では、正確な「暦」 が
皇帝の権力の象徴とされていた。
「暦」の正確さは、
天文学の技術の高さの証明です。
当時は、天文学とはいわず、
「天の意思」といっていました。
簡単にいうと《神さまの意思》です。
それだけ、太陽や月、そして星が、
神秘的な存在だと思われていたわけです。
神さまの意思を、いかに、正確に語れるか。
それが皇帝のステータスだったというわけです。
『暦』とは…
いつ気候がかわるか、
いつ満月になるのか、
いつ年があけるのか。
それら「時間」を管理するためのシステム。
それが、時の権力と結びついて、
国家全体の時間の流れを
コントロールするに至ったわけです。
まったく、すごい仕組みです。
時間に対して、
アバウトな価値観しか持たなかった当時の日本人が、
急いで取り入れたのも当然です。
こうして日本人の中で、
「時間」に対する価値観が高まっていったのです。
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