あなただけじゃなく相手も愛憎の狭間で苦しんでいる
まったく相反する2つの感情が、同時に現れることってありませんか?自分の中に二人の自分がいる感覚とか。自己肯定感が低いとき「自分の中で対立が起きる」という感覚になってしまいます。これを心理学用語で「アンビバレンス」といいます。「好きと嫌い」が両方存在する状態です。
芥川龍之介という明治の文豪が『鼻』という小説の中で、人間が持つアンビバレンスな感情をうまく表現しています。「人間の心には互いに矛盾した二つの感情がある。誰でも他人の不幸に同情しないものはない。ところが、その人が不幸をどうにかして切り抜けると、今度はこっちで物足りないような心もちがする。もう一度その人を、同じ不幸に陥れてみたいような気にさえなる」
たとえば、妻が重病のときは仕事を忘れて看病していた夫が、妻の容態が快方に向かうと、急に仕事が重要だと思うようになります。このように人間は不思議な感情を持っています「アンビバレンス(ambivalence)」は愛憎感情のことです。人が持つ思考や興味において、二つの対立した感情が同時に存在することを指します。
ある対象で「愛と憎しみ」の気持ち、「好きである反面嫌いでもある」というような感情です。人は誰でも二面性を併せ持っています。これは病気ではありません。外では明るくても家に戻れば無口になってしまう。甘党だけど太りたくないからケーキは食べない。街に出かけたいけど、電車に乗るのが面倒だから家にいたいと思う。
このように人は二つの相反する心情を、誰もが持ち合わせています。これを理解し、逆手にとって人に声をかけると相手の懐に入ることができます。暗くておとなしい人に「人が嫌いですよね」と言うのではなくて、「気が合う人とはよく喋るでしょう?」と裏を返して言ってみるのです。すると、「この人は私を分かっている」と感じ、胸を開いてくれるものです。
これも人身掌握の簡単なテクニックのひとつです。
・好きだけど嫌い。
・やりたいけどしたくない。
・欲しいけど欲しくない。
こういったアンビバレンスの特徴を理解してみてください。アンビバレンスは愛憎感情ですが、よく使われるシチュエーションは恋愛や人間関係になります。
たとえば、浮気をした彼のことが許せず、憎しみで溢れているのに、心のどこかで好きな気持ちがある。どうしても好きになれない、といった事象がアンビバレンスの例です。恋愛や人間関係で悩んだとき、アンビバレンスで心が揺れてストレスの原因になっている、これを理解するのです。あなただけじゃなく相手も愛憎の狭間で苦しんでいる、と心情をつかみ取るのです。
仕事は好きだが、辛くて辞めたい時もあります。欲しい服を買うか、買わないか、しばらくの間よく悩みますよね。二重人格と言われたけど、それは一種のアンビバレンスです。占い師として評価されるのは背反する感情を的確に捉えているからです。